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※手術の写真を掲載しておりますので、
苦手な方はご注意ください。

軟口蓋過長症
●軟口蓋過長症とは?
軟口蓋は息を吸うときに食道を閉じ、ご飯や水を飲み込むときに鼻腔側を閉じることで誤嚥を防ぐ役割があります。
しかし生まれつき軟口蓋が長い場合、吸気時に気道の背側を覆うことで気道閉塞を起こします。そのため呼吸をする際にガーガー音がなったり、寝ているときにいびきがひどくなったりするなどの症状を生じます。軟口蓋は加齢に伴いより長くなるため、徐々に症状が顕著になっていきます。このような疾患を軟口蓋過長症といいます。
これは短頭種気道症候群(*1)の1つで、生まれつきの上部気道疾患です。名前の通りパグやペキニーズなどの短頭種に多いとされていますが、ヨークシャー・テリアやチワワ、ポメラニアンといった小型犬でも報告がされています。

*1:短頭種気道症候群:外鼻孔狭窄、軟口蓋過長、喉頭小嚢の外反、喉頭虚脱、気管低形成、扁桃の肥大の総称
●症状
ガーガーとガチョウの鳴き声のような音を鳴らして呼吸をしたり、寝ているときにいびきをかいたりします。
症状が悪化すると、寝ているときだけでなく興奮時にもいびき音が聞こえるようになり、さらには呼吸困難やチアノーゼなど命に危険を及ぼす状態にまで進行してしまうこともあります。
●診断
頸部のレントゲンによって伸長あるいは肥厚した軟口蓋が確認できます。
麻酔下の内視鏡検査でも軟口蓋の形態的異常をみることができます。しかし重症の場合は安易な麻酔は大変危険なため注意が必要です。

●治療
呼吸困難や、それによる運動性の低下などの症状がない場合治療は不要です。
症状が軽度な場合、内科的治療でステロイド剤や去痰剤を用いて症状を軽減します。
しかし軟口蓋による物理的な閉塞がこの疾患の原因のため、根本的な治療は外科的切除です。とくに気管低形成や気管虚脱などの併発疾患の発生抑制や症状軽減を目的とする場合は早期の外科的切除が望ましいです。扁桃の後部から中央まで、喉頭蓋の先端と軟口蓋の中心が接触する程度の長さまで切除することで、気道を確保し呼吸をしやすくします。
↑↑手術中の様子
●今回の症例
ポメラニアン 9歳 男の子
以前から咳を頻繁にしており、ガーガーと音を立てて呼吸をするため、気管支拡張剤や抗生剤などの薬を飲んでいました。咳は心疾患によっても発症することがありますが、この症例は心臓に異常はなく、レントゲン検査において軟口蓋過長による喉頭の浮腫が認められたため軟口蓋過長症と診断しました。
気管虚脱や喉頭虚脱も併発しており、症状の改善を目指し外科的に軟口蓋を切除しました。
術後呼吸状態は安定しており一度退院しましたが、10日後に自宅にて20〜30分間続く咳が認められ、ステロイドを内服で処方しました。その後発咳は落ち着き、術前よりも頻度が減ったため内服も終了し、一通りの治療が終了しました。


ご家族のわんちゃんでこのような咳やいびきでお悩みの方はぜひお気軽に当院までご相談ください!


執筆担当:獣医師 山本
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