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※手術の写真を掲載しておりますので、
苦手な方はご注意ください。

犬の根尖膿瘍の一例
●概要
 歯の根っこの部分は歯槽という骨の中にくさび状に埋まっており、その先端部分からは血液の供給を受けたり、神経が入り込んだりしています。それら歯根の先端部分領域は根尖部と呼ばれ、炎症を起こしやすい部位の一つに挙げられます。
上顎の根尖周囲病巣は歯のみならず隣接する鼻腔内へも症状が波及する結果、鼻炎や出血、蓄膿などを起こします。また、炎症部位がトンネルのように瘻管を形成し、目の下の部分の皮膚に穴が開いて膿が出る場合や歯肉から膿が出てくるなどの症状が起こることもあります。

●症例
 11歳チワワMIX 下のワンちゃんは歯周炎と目の下の腫れを主訴に来院されました。また、片方の鼻孔からの鼻水やくしゃみなどの症状がありました。見た目には歯石の量もそれほど多くなく、歯がぐらついているなどの所見もありませんでした。
(写真)〇の部分に穴が開き膿が出ている(内歯瘻)
 場所としては上顎の臼歯の根尖部の炎症の波及が疑われました。レントゲンを撮ってもあまりはっきりとは分かりませんでした。
 また、鼻の中に腫瘍や異物などの原因があるかどうかを鑑別して調べるためCT検査を実施したとことろ、多量の分泌物がたまっていることが判明しました。
(CT像)矢印部分の歯根と鼻腔が連続しており、片側全体が膿瘍で満たされている
 CT後にそのまま麻酔下にて抜歯を行い、鼻腔内を良く洗浄し抜歯窩を縫合しました。問題のあった臼歯はぐらつきこそなかったものの、歯周のポケットは歯槽の骨組織が吸収されてえぐれて深くなっており、周囲組織はとても脆い状態でした。
 処置後の次の日からとても元気で食欲もあり、3日後の再診時には鼻の症状も落ち着いていました。
歯石は放置すると中高齢の子たちでは必ずと言ってよいほど問題となってきます。スケーリングを含めた歯科の処置は麻酔を伴いますので、動物の体調を獣医師とよく相談しながら適宜実施していかれるのが良いと思います。

執筆担当: 獣医師 喜多見
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