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※手術の写真を掲載しておりますので、
苦手な方はご注意ください。

キシリトールを誤飲した犬の一例
●概要
キシリトールは代用糖として食品に添加されていることがあり、一般には甘味料として使用された菓子パンや、ガム、キャンディ、デンタル商品などを摂取した結果中毒を生じます。キシリトールは犬ではインスリン分泌を刺激する効果があり、摂取した用量に応じてインスリン濃度が上昇し、摂取後30分~1時間で急速に低血糖が生じます。
また、肝臓に毒性があり亜急性(9₋72時間)に肝障害を起こします。肝障害に関連した凝固機能異常や貧血、黄疸などが現れた場合には予後は非常に重篤化します。
●症状、診断
初期には嘔吐下痢などの胃腸障害
低血糖による傾眠、運動失調、発作、けいれん、虚脱
低カリウム血症
低リン血症
肝障害によるGOT、GPT、ALPなどの肝酵素上昇
黄疸
貧血、凝固機能異常、黒色便
●治療
摂取後間もなく、症状が出ていなければ催吐処置や胃洗浄処置
グルコースの投与と持続的な血糖のモニタリング
低K、低P血症の場合はカリウム、リンの補正
肝障害を呈している場合は肝保護剤の投与
貧血や凝固機能異常が進行している場合には血漿ないし全血輸血の検討
●症例
4歳雄ミックス、体重1.9kg。朝キシリトール入りガムが2~3個無くなっているのに気づく。数時間後、嘔吐と震えがあるとのことで受診されました。
血糖値は124mg/dlで正常範囲でした。GPT(肝酵素)136U/lとやや高い傾向がありました。腹部レントゲン検査では異常は確認されませんでした。
低血糖は見られず、摂取後の時間経過から催吐処置は行いませんでした。吸着剤として活性炭製剤1gを投与しました。静脈を確保し、グルコースを何時でも投与できる状態で監視し、2時間程度ごとに血糖値をモニターしました。制吐剤を投与し、肝保護剤は点滴に混合し投与しました。
24時間経過時点でGPTは96U/lと低下し、低血糖は一貫して認められませんでした。嘔吐もなく食欲もありましたので、肝保護剤内服を処方し退院としました。

市販のガムのキシリトールの含有量は0.5g/粒程度からタブレットなどでは更に高い製品もあるようです。一般に体重1kg当たり0.1~0.5gが中毒量と言われていますが、実際のところもう少し多い量でも毒性を示さない場合もあり、キシリトール中毒に関しては個体差があることが言われています。今回ガムを3粒誤飲したのだとしたら摂取量は0.79g/kgとなり、中毒量の基準をかなり超えることになりますが、幸いにも症状が軽度で済んだのは個体差によるものと考えられます。

執筆担当: 獣医師 喜多見
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