猫の体(循環)門脈シャント(PSS)
●概要
腸から吸収された物質は門脈という血管から肝臓へ運ばれます。同時にアンモニアなどの有毒物質や神経物質、侵入した細菌や毒素なども運ばれ、これらは肝臓で処理され無毒化されます。この門脈から体循環血管へと交通する異常な血管が生じた状態を体門脈シャント(portosystemic shunt ;PSS)といいます。血流が肝臓を迂回することにより、これら血液成分が処理されないまま直接循環へ流れ込むことにより代謝の異常が起こります。また、肝臓への血流が減少する結果、肝臓の機能も低下してしまいます。
猫では3歳以下の雄で発生率が高く、品種による違いもいくつか知られています。先天的にシャント血管が存在する個体では、食事に関連する肝性脳症を主症状とします。他にも成長不良や代謝異常による尿酸塩結石症などが起こります。先天性PSSの子では目の虹彩が特別な金色~銅色の色調をしめすという報告もあります。
一般臨床検査で認められる異常には以下のようなものがあります。
血液検査:高アンモニア血症、尿素窒素やクレアチニン濃度の減少、肝酵素値の上昇、低アルブミン血症、食後血清胆汁酸濃度の著しい上昇
レントゲン検査:小肝症
尿検査:尿比重の低下、尿酸アンモニウム結晶
●症状
下痢や嘔吐、元気消失、体重減少、浮腫・腹水、胸水による呼吸困難など
中には、消化器症状を全く認めない症例もいます
●診断
血液検査で高アンモニア血症、貧血、尿素窒素やクレアチニン値の低下が発見されます。超音波検査は非侵襲的で麻酔の必要もなく簡便な検査と言えます。造影CT検査では、シャント血管を完全に描出でき、手術を計画する上でも非常に有用な検査となります。
造影されたシャント血管
●治療
先天性のシャント血管が明らかなものは、外科的にこれを結紮(結んで)し遮断することが第一選択になります。周術期の合併症として、高頻度に痙攣や失明などの神経症状が伴うことがあります。数か月かけて徐々に収まる場合もありますが、これらの症状が起こる原因は分かっていません。
手術を受けるまでの間や手術によらない治療を目指す場合には、薬剤を用いて肝性脳症による神経症状を防ぐことや、肝機能低下による影響を最小限にするために肝庇護薬やビタミンの補充、食事療法などを行っていきます。
文責 獣医師 喜多見
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