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※手術の写真を掲載しておりますので、
苦手な方はご注意ください。

腹腔鏡下での犬の潜在精巣(陰睾)の摘出手術
●概要
雄犬の睾丸は生後すぐにはお腹の中に発生しており、30日齢ぐらいまでかけて、ホルモンなどの影響を受けながらお腹の中から鼠経(太もも内側の付け根部分)を通って陰嚢内へと移動します。この移動が上手くいかない結果、お腹から出てこなかったり、途中の皮下に留まったままの状態になったものを潜在精巣と言います。“停留睾丸”や“陰睾”などの呼び方も同じものを指します。
これら潜在精巣が起こる原因は遺伝とされています。正しく移動しなかった精巣には造精機能はありませんが、片側が正常であった場合に繁殖が可能であることから、この体質が受け継がれることとなり、臨床的には犬では比較的よく遭遇します。

●症状
普段の症状はありません。両側で発症すれば不妊となります(上記のように片側が正常であれば繁殖能力を有しますが、遺伝する病気ですので繁殖させることは不適当です)。
しかしながら、最も重要なことは、潜在精巣は後年、腫瘍化する確率が通常に比べて10倍以上高くなるということです。腹腔内で腫瘍化したものを長く見過ごしてしまうと、致命的な貧血を起こしたり腹腔内のリンパ節への転移が起こるなど非常に深刻な事態へと発展することがあります。

●治療(手術について)
上記疾病を予防する目的と、繁殖をコントロール(病気の種を残さない)するために去勢が推奨されます。
お腹の中にある精巣は開腹手術によって取り出さなければならず、皮膚を切るだけの通常の去勢手術と比べて格段に侵襲性が高くなってしまいます。
これに対し、近年では腹腔鏡を使用した手技が確立し、開腹せず同様の手術を行うことが可能となっています。小さな傷で精巣を取り出すことができるため、開腹手術に比べて治りも早く、痛みがより少なく済むというメリットがあります。
当院でも患者様には同様のご説明をしたうえで、腹腔鏡下での術式を選択いただく機会が増えてきております。 潜在精巣の手術を控えている子の飼い主様には、是非腹腔鏡手術を検討され当院までご相談頂ければと思います。
腹腔内での精巣を持ち上げた様子
腹壁に吊り上げ針で固定して切除します
上2つが腹腔鏡手術の跡(一番下の傷は反対側の皮下陰睾の摘出跡です)
潜在精巣の外科治療に関するご質問等ございましたら、是非一度相談いただければと思います。

文責 獣医師 喜多見賢二
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