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※手術の写真を掲載しておりますので、
苦手な方はご注意ください。

犬の動脈管開存症(PDA)
●動脈管開存症(PDA)とは
動脈管開存症(PDA)は、生後に自然と閉じるはずの「動脈管」という血管が閉じることなく残ってしまう、生まれつきの心臓病(先天性心疾患)です。

●動脈管とは
動脈管は心臓から肺に血液を送る「肺動脈」と心臓から全身に血液を送る「大動脈」を繋ぐ血管です。
胎児期には肺呼吸をする必要がないため、肺への血流量は肺の発達に必要な分だけにして、そのほかは動脈管を通じて大動脈に流しています。これにより母体からの酸素や栄養を全身に効率良く送ることができ、胎児の成長に大きく貢献します。
しかしながら、動脈管が生後も閉じずに残ってしまうと大動脈の血液が肺動脈に流れ込み続けてしまいます。
●症状
生後すぐから数ヶ月の間では症状がないことが多いです。
病状が進行すると肺動脈や肺の血管に負担をかけてしまい、咳出たり呼吸が苦しくなる「肺高血圧症」になります。
さらに進行すると動脈管内の血液の流れが逆転し、肺動脈から大動脈に向かって流れるようになります。こうなると、肺で酸素を受け取る前の血液が大動脈を流れることになり、全身が低酸素状態になります。酸素が特に不十分なときには皮膚や粘膜が青紫色になる「チアノーゼ」という症状を示すことがあります。

●診断
PDAは「連続性雑音」という特徴的な心雑音を発することが知られています。そのため、心臓の聴診である程度診断をすることは可能です。
心音に異常があれば次の検査として心臓超音波検査を実施して確定診断とします。超音波検査では動脈管の有無と血流を観察・測定し、心臓の機能を併せて測ることでPDAの重症度を判定することができます。

●治療
PDAの根治治療は外科手術です。
手術には、肋骨の隙間から胸を開ける「開胸手術」と脚の血管からアプローチする「インターベンション手術」の主に2つの手術方法があります。

①開胸手術
心臓やその他の血管を直接目で見て確認して動脈管を糸で結んで閉じます。直接見て結ぶので確実性が高いですが、胸を開くため動物への負担(侵襲)は大きくなります。
②インターベンション手術
内股にある大腿動脈からカテーテルを心臓まで侵入させ、「コイル」を動脈管内に固定することで動脈管を閉じます。開胸手術に比べて傷は小さく侵襲も少なくなります。
しかし、技術的に難しい点や特殊な装置・器具が必要なること、動物の体格や動脈管の構造等により適用にならない場合があります。
●おわりに
今回は動脈管開存症(PDA)について紹介させていただきました。
生まれつきの病気であり聴診だけで絞り込むことができるため、新しく子犬・子猫を迎えられた際には一度身体検査を受けてチェックすることが重要です。
我々の動物病院グループでは開胸手術とインターベンション手術のいずれも行うことが可能であり、診察から治療・手術、術後管理を一貫して行なっております。また当院では毎週水曜日に循環器認定医による診療を行なっており、より専門性の高い診療を行なうことが可能です。

文責 獣医師 森将就
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