子宮蓄膿症について
子宮蓄膿症とは、子宮の中に細菌が入り込み、膿が溜まってしまう病気です。避妊手術をしていないわんちゃんがなりやすい病気であり、黄体ホルモンが発症に関連していると言われています。
◆どんな病気?
子宮の内膜が肥厚し、細菌の感染によって大量の膿が溜まります。悪化すると菌が全身にまわってしまうため命にかかわります。
・開放性子宮蓄膿症: 外陰部から膿が出てくるタイプです。
・閉鎖性子宮蓄膿症: 膿が子宮の中に閉じ込められてしまうタイプです。外から見て症状に気づきにくいので、発見が遅れてしまうこともあります。
◆なりやすいのはどんな子?
犬: 平均8〜10歳くらいの、避妊手術をしていない中高齢の子によく見られます。出産経験のない子や、長い間出産をしていない子に多い傾向があります。
猫: 5〜7歳以上の子に多く見られますが、犬に比べると発生は少ないとされています。発情期が終わってから1〜2カ月後に発症することが多いです。
◆診断方法
子宮蓄膿症の可能性がある場合、以下の方法で診断を行います。
獣医師による診察: 元気がない、よく水を飲む、おしっこの量が増えた、吐く、食欲がない、お腹を痛がるなどの症状がないか確認します。また、避妊手術を行っているか、前回の発情がいつだったかお伺いします。
外見の確認: 陰部から膿が出ていないかチェックします。
血液検査: 体の中で炎症が起こっていないか調べます。腎臓・肝臓にかかわる数値が上昇することがあります。
レントゲン・超音波検査: お腹の中の様子を画像で確認し、子宮が腫れていないか、膿が溜まっていないかなどを調べます。
これらの情報を総合的に判断し、診断を下します。
◆治療法
治療の選択肢は主に外科療法と内科療法の2つです。
外科手術(卵巣子宮摘出術)
最も確実な治療法です。避妊手術と同様に、卵巣と子宮を摘出します。これにより、子宮蓄膿症の根本的な原因を取り除くことができます。
重症な場合は、手術の前に点滴などで全身の状態を安定させる処置を行うこともあります。
ほとんどの場合、手術後の経過は良好です。
内科療法
内科療法は、手術が難しい場合や、どうしても将来的に出産を希望する場合に検討されます。薬を使って子宮の収縮を促し、溜まった膿を体の外に出す治療法です。
内科治療の注意点:
膿が閉じ込められている「閉鎖性」の場合、効果が出にくいことがあります。
治療には時間がかかり、その間は注意深く観察する必要があります。
根本的な治療ではないため、また再発してしまう可能性が高いです。特に年齢を重ねると再発のリスクは高まります。
治療が終わっても妊娠・出産が難しい可能性があります。
◆症例紹介
14歳チワワちゃん 未避妊の女の子
10日ほど前からの食欲不振と便秘で来院されました。全身状態のチェックのため血液検査と画像検査を行ったところ、以下の異常がみつかりました。
血液検査…白血球数、腎数値、炎症マーカー(CRP)の上昇
超音波検査…子宮壁の肥厚、子宮内における多量の液体の貯留
<超音波検査で確認された子宮に溜まった膿(黄矢印)>
避妊をしていないわんちゃんであること、また食欲不振があることや各種検査の結果から総合的に判断し、子宮蓄膿症疑いとして治療を開始しました。
この子は外陰部からの排膿がなかったため閉鎖性の子宮蓄膿症になります。内科療法が奏功しない可能性が高いため、外科手術が適応になりました。
ですが、腎数値や炎症関連の数値が高いため、まずは安全に手術ができるように点滴と抗生剤で全身状態の改善を行い、翌日に手術となりました。
手術後は、入院下で引き続き点滴と抗生剤投与を行いました。数日後には食欲が回復し、腎数値や炎症関連数値も改善されたため、無事に退院できました。
子宮蓄膿症は命にかかわる病気です。若いうちからの避妊手術により子宮蓄膿症だけではなく乳腺腫瘍の発生率を下げることもできます。
避妊手術の相談や、まだ避妊をしていないわんちゃん・ねこちゃんの体調不良の相談がありましたらお気軽にご連絡ください。
執筆担当 獣医師 各務